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爆笑問題の太田光さんが週刊新潮でおなじみの新潮社と裁判しています。今回は太田光さんと新潮社の裁判について、概要と争点、判決と控訴についてまとめていきます。
太田光vs新潮社の裁判概要
きっかけは新潮社が発行した週刊新潮(2018年8月16日、23日 夏季特大号)にて「爆笑問題『太田光』を日大に裏口入学させた父の溺愛」という記事を掲載したことです。
この記事を要約すると、
- 太田光さんは日大芸術学部に正規合格できなかった
- 父・三郎さんは暴力団関係者を通じて裏口入学を依頼した
- 現役教員に試験内容をホテルで教えてもらった
- 合格後、日大芸術学部に寄付金として800万円支払った
ということです。
これに対して太田光さんは以下の内容で新潮社に賠償金3300万円をかけた裁判を起こしました。
- 当該ネット記事の削除
- 週刊新潮での謝罪広告の掲載
- パブリシティー権(有名人が自分の名前や写真で独占的に人を引き付ける権利)の侵害
裁判の争点は?
この裁判の争点は「週刊新潮の記事内容が真実かどうか」というところです。
太田さんはこの記事は名誉毀損(めいよきそん)にあたるとして裁判を起こしました。
ポイントになるのは次の3点であり、どれをとっても太田さんへの名誉毀損が成立します。
- 「公然と」…購入すれば誰も知ることができた=不特定多数が知る可能性があった
- 「事実を摘示し」…裏口入学が真実であると報道した
- 「人の名誉を毀損した」…一連の騒動で太田さんへのバッシングや影響は大きかった
そのため、新潮社は人々に真実を伝える報道の公益性を前面に押し出して特例の適用を狙っています。裏口入学が真実であると証明できれば、新潮社から太田さんへの名誉毀損は成立しません。
東京地裁の結果は?
東京地裁は2020年10月1日に審理した裁判について、2020年12月21日に太田さんの主張を一部認める判決を出し新潮社に該当記事の削除と440万円の支払いを命じました。
新潮社の主張はこちら。
・太田さんは当時割り算もできないレベルだった
・太田さんの母校から日大芸術学部演劇学科に合格した生徒はいない
・合格発表日の翌日に作成された高校の進路先リストで太田さんは別の大学に進学するとあった
対する太田さんの主張がこちら。
・割り算ができないは芸人になった後ネタで披露したもの
・裏口入学に関して何も知らない
・父が亡くなっているため可能性は否定できないが、父の性格上ありえない
加えて、太田さんの証人として高校時代担任だったT先生と演劇部の顧問の先生が証言したのがこちら。
「非常におとなしい生徒で、本をよく読んでいた。文系科目が強く、定期テストではクラスで上位、模擬テストではかなり順位が高かった。本人に力はあったので、十分に合格する可能性はあったと思う」(担任のT先生)
「ゼロに近いほど友だちが少なく、昼休みはいつも図書館におり、読書量はものすごかった。演劇に対しての思いも強く、モノになるのではと思っていた」(演劇部の顧問)
2人の証言からすると、学生時代の太田さんはそこそこ勉強ができて、本当に友だちがいなかった、そんなところ。にしても、友だちがゼロなんてここで言う必要はあるのだろうか。太田さんを助けるつもりで言っているところがまた、本当に友だちがいなかったんだなと思わせてしまう。
ハーバービジネスオンライン「法廷沸かせた爆問・太田光 裏口入学について裁判で語られたすべて<裁判傍聴記・第4回>」
先生たちの証言で太田さんに友達がいなかったことに触れられてますが、これは新潮社の「割り算ができなくて驚いた」と主張する同級生の証言の信ぴょう性のなさを証明するためだと考えられます。
また、裏口入学のために支払った800万円について新潮社は関係者の証言だけで終わらせています。裏口であるため振込用紙や預金通帳などが証拠として残されることはなく、父・三郎さんがすでに亡くなっている以上証言できるのがお金を受け取った人しかいません。
東京地裁は新潮社の取材を「十分な裏付けを行ったとは言い難い」としてネット記事削除と440万円の賠償を新潮社に命じました。ただし謝罪広告の掲載やパブリシティー権の侵害については認めませんでした。
今後どうなっていくか
東京地裁の判決は2020年12月21日に出ましたが新潮社は当日中に控訴の用意を発表し、12月25日に控訴しました。
新潮社の控訴を受け、太田さん側も12月30日に控訴しました。今後、控訴を受けた東京高等裁判所が判断することになります。ただ、控訴があっても70%は棄却されるため棄却された場合は新潮社がネットを記事を削除して太田さんへ440万円支払って終わることになります。
今後、新潮社は太田さんの母校である大東文化大学第一高校の進路調査の書類を証拠として強く提示していくとのことです。
太田さんが日大芸術学部演劇学科に合格した1984年、合格発表日は3月1日頃だったはずです。それなのに3月2日に作成された進路先リストでは太田さんは滑り止めと証言した横浜放送映画専門学院とあり、他に受験しているとの情報がなかったのです。
新潮社はこの部分を他の資料とともに控訴して争う姿勢を見せています。
ちなみに、新潮社が記事の真実性を証明するための最適な方法は「実際に800万円が動いた振込用紙や預金通帳」などのコピーを持ってくる、「実際にお金を受け取った日芸関係者」「裏口入学の窓口となった経営コンサルタントの男性」を証人として裁判に連れて来ることですが、ありえないと言えます。
新潮社の味方をするために裁判に証拠を提出する、証人として参じることは「日本大学芸術学部は指定暴力団とつながりのある裏口入学を行い、見返りに金銭を受け取っていた」と証言することになるからです。普通は出てきません。
また、スクープのネタ元が裁判に呼ばれるような前例を作ってしまえば、誰も新潮社にスクープ情報を提供してくれなくなります。新潮社としてもネタ元を表に引きずり出すようなことは自社の信用にかけてしないでしょう。
おわりに 新潮社が勝つのは難しい
現在の事実関係、証拠、証言では太田さんが有利です。
新潮社は800万円の支払いを証言できる証拠、証人を用意すると信用がゼロになって誰もタレコミしてくれなくなるため、別の証拠を用意する予定です。
それが太田さんの進路先が書かれた進路先リスト(進路調査票)ですが、疑問点があります。
まず、太田さんが受験したのは1984年のことであるため、記事の書かれた2018年でも34年が経過しています。学校教育法施行規則第28条によると、文書について保存期間が定められています。
- 指導要綱とその写し…20年
- 入学、卒業などの学籍…20年
- 指導に関する記録…5年
- その他の表簿…5年
つまり、約35年前の資料はすでに廃棄されていてもおかしくありません。それが都合よく証拠として提出できるのか?という疑問が残ります。
参考資料
週刊女性PRIME 爆笑問題・太田光の“裏口入学”裁判、新潮社「証拠なかった」で完オチ決着か
HARBORBUSINESSOnline 法廷沸かせた爆問・太田光 裏口入学について裁判で語られたすべて<裁判傍聴記・第4回>
裁判所 判決に対する上訴-控訴と上告
第二東京弁護士会 1.控訴審弁護の基本事項
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